曜日に因んだテーマでおくる 1週間のサイエンスリレー
科学技術で水問題の解決を!
株式会社島津製作所 名古屋支店 藤岡 秀治 (特定非営利活動法人 日本水フォーラム 理事)
5月1日に即位された天皇陛下は、“水”への深い知見と洞察によって世界から共感と尊敬を集められてきました。報道でお聞きになった方も多いと思いますが、世界各国の水の専門家が集い、水問題解決を目指して3年毎に開催される「世界水フォーラム」と大きなかかわりがあります。2002年京都市で開催された第3回世界水フォーラムで琵琶湖や淀川の水運をテーマに講演され、その後も同フォーラムにおいて講演またはビデオで水問題解決に向けたメッセージを発せられています。特に、2015年の韓国では「水に関する科学技術」「水循環」が、2018年のブラジルでは「分野横断連携の重要性」「SDGs(2030年に向けた持続可能な開発目標)の達成」が発せられるなど、世界の変化に応じたメッセージと共に、政治を超越した立場とお人柄からくるものだとされています。
地球の水は、海水や河川の水として常に同じ場所に留まっているのではなく、太陽のエネルギーによって海水や地表面の水が蒸発し、上空で雲になり、やがて雨や雪になって地表面に降り、それが次第に集まり川となって海に至り、絶えず循環しています。(下図参照)私たちが利用可能な淡水資源は絶えず「循環する水」の一部であり、この水循環を健全に保つことが持続的な社会を築く上で非常に重要になります。
では皆さん、”水”に関する問題と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?上水、下水、トイレなどが整備されている日本では“水”は当たり前の存在で問題意識は低いかもしれません。これが、世界レベル、地球レベルになると想像を超える問題が多数あります。何と“水”はその覇権を巡って過去から幾度となく争いが起こっているくらいなのです。主な水問題は、飲み水、環境破壊(下水、汚水処理等や生物多様性の破壊など)、衛生・健康(トイレや手洗い等)、工業・農業用水、エネルギー(水力発電等)、水災害(異常な降雨や洪水、干ばつなどで地球温暖化と密接にかかわる)などですが、これらは、貧困、飢餓、平和、教育、ジェンダー、難民・移民などの問題とも関連しているのです。ここでは詳細は割愛しますが、つまり水問題はSDGsの主な開発目標と密接にかかわる横断的な課題なのです。縦割り組織の代表である日本の行政(厚生労働省・国土交通省・環境省・農林水産省・経済産業省等々)は、横断的な課題である水問題を解決すべく水循環基本計画を策定するなど 従来の枠組みを越えた(つまり、省庁横断的な)取り組みを開始しています。地球レベルで水循環を健全に保つことが非常に重要であり、その実現に向けて科学技術を担う協会会員企業として、弛まぬ努力を重ねていきましょう!
更に地球に生きる私たち個人個人としても水問題の解決に関心を持ち、何か行動していきましょう!