東海科学機器協会の会報

No.293 2002 冬号

表紙の言葉 「我が家のペット自慢」

壽工業(株) 伊丹惣三さん


19-13
 1992年9月20日、宇宙飛行士の毛利 衛さんがスペースシャトル・エンデバー号内で数々の実験を行いました。その中のひとつに「錦鯉による宇宙酔いの実験」があります。
 シャトルに乗せるのは体長約25センチメートルの二匹の二年鯉。これらの鯉はいずれも愛知県弥富町産。数十匹をシャトル打ち上げ一ヶ月前にケネディ宇宙センターへ送り、その中から一番状態のいいものを選び、耳石を除去したものと正常な鯉を各一匹搭乗させました。
 錦鯉が選ばれたのは、平衡感覚を担当している内耳の構造が人間と似ていること、餌をしばらく与えなくても生きており、手術も容易であること、水中での動きを撮影するときテレビ写りがよいことなどがその理由です。
 日本からアメリカへ空輸して打ち上げまでの一ヶ月間、健康な状態で待機させなければなりません。宇宙開発事業団の要請に応え、社内で錦鯉の健康を保持するための飼育実験を行いました。わかったことは、弥富の池の水と同じ水質の水をケネディ宇宙センターでの待機中ずっと供給し続けなければならない、ということでした。
 世紀の大実験に失敗があってはならじ、と当社の技術者二名が宇宙センター傍に滞在して水質管理を続け、搭乗から打ち上げまでを見届けました。後日の報告で実験が成功したとのことでした。
 宇宙鯉の兄弟を貰って我が家の小さな池に放ち、13年間、毎日餌を与えています。現在でも15匹が優雅に泳いでいます。とても可愛いものです。